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2005年03月23日

チューチョ・デ・メヒコ氏のこと

ChuCho.jpg

この前の私のblogで、アルパを弾く天才少女の話をした。とにかく、一度音楽を聴くと、それをすべて覚えてしまい、次の瞬間にはアルパでそのまま弾き出す、という、今村夏海さんの素質はすばらしい、の一言に尽きる。そして、彼女のそのアルパをエンターティメントとして世に出すほどまでにしたのは、やはり「チューチョ・デ・メヒコ」氏の功績だ、と言う人は、実は彼女の周りにとても多いのだ。

チューチョ・デ・メヒコ氏は、既に70歳を超える。しかし、今村夏海さんのコンサートで聞かせたその楽器の音、そして歌声は、目をつぶって聞いていると、いったいどこの若者が歌っているのだろう?というくらい艶がある。

チューチョ・デ・メヒコ。彼の知名度は日本ではそれほどポピュラーではない。しかし、彼は、メキシコを、というよりもラテン世界を代表する、ラテン音楽を代表する男なのだ。戦後から今に到るまで、ラテン世界では、かなり長いあいだ「ラジオのスイッチを入れれば彼の歌声が聞こえる」と言われていたが、それは決して偽りでも誇張でもない。今も、彼の音楽がラジオから流れない日はない。私の妹は、長くスペインのマドリッドに留学生活を送っていたので、彼女にも聞いてみたら、「もちろん、知らない人はいない」という答えだった。もちろん、戦後の日本で「音楽好き」と自称する人たちのほとんどが、彼の音楽を聴いたことがあるはずだ。ラテン音楽は、なぜか日本人の感性に合う。私の死んだ父も、ラテンのレコードを多く持っていた。

ラテン界でのチューチョ氏の名声はとにかくすごかった。彼が米国の大統領、ジョン・F・ケネディやリチャード・ジョンソンの前で演奏した、ということや、1960年代、日本に来たときも、日本の皇族の前で演奏した、という事実を知れば、それもうなずけるだろう。アメリカはじめ、日本も含めた「戦後」が終わり、経済成長によって明るい未来をみんなが見ていた「黄金の60年代」に、世界中に流れたメキシコの音楽。それがチューチョ・デ・メヒコの音楽だった。

そのラテン音楽の「雄」とも言えるチューチョ氏の現在の奥さんは滝沢久美さんという日本の方だ。チューチョ氏が出てくるコンサートにはいつもあでやかな和服姿でやってくる。チューチョ氏を見て、聞いてくれるお客様に失礼のないように、という心遣いが、いつもまぶしく見える。そして、その奥さんのために、そして、日本という国のファンのために、チューチョ氏は1988年から日本にずっといて、私たちの目を、耳を楽しませてくれている。

いい音楽は時代をこえる。でも、人の寿命は時代をこえることができない。しかし、チューチョ氏の歌を生で聞いていると、それがいつまでもいつまでも、自分が生きている限り生で聞けるのではないか、という錯覚に陥ってしまう。いや、いつまでも聞いていたい、という気持ちがある。

今回のコンサートの中心であった今村夏海さんはじめ、後輩の育成だけでなく、チューチョ氏の音楽をもっと聴きたい、という人のため、もっとがんばってほしい、と切に願っている。

舞台のアルパ.jpg

投稿者 nori-m : 2005年03月23日 16:03

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